別れを選びましたが、赤ちゃんを宿した私を一途な救急医は深愛で絡めとる
ましてや、相手が優秀なドクターだなんて腰を抜かすかも。

いつも冷静な陸人さんのソワソワぶりは意外だったが、さっき天沢家に向かったときの私と同じか。


「よし。行こう」


どうやら気持ちを落ち着けた様子の彼は、私の手を引きチャイムを鳴らした。

すぐに玄関先に出てきた母は、陸人さんの顔を見る前から笑顔だ。


「心春、久しぶりね。あなたひとり暮らしを始めたら、ちっとも帰ってこないんだもの」
「ごめんなさい。忙しくて」


母は私と会話をしているくせして、視線はすでに陸人さんに向いている。


「初めまして。今日は突然お邪魔して申し訳ありません」
「とんでもない。お会いできるのを楽しみにしていました。さあ、どうぞ」


上機嫌な母は陸人さんを家の中に促した。

リビングのソファにふたり並んで座っていると、妙にかしこまった父が入ってくる。

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