別れを選びましたが、赤ちゃんを宿した私を一途な救急医は深愛で絡めとる
ときには私に『迷っちゃって……どれがおすすめ?』などと尋ねてくる。

普段、会話は極力少なくしたいほうなのに、彼に話しかけられると心が弾むのだ。

視線や口調が優しくて、安心できるからなのかもしれない。

実はそんな彼に、ひそかにあこがれているのは誰にも秘密だ。


「心春ちゃん、どう?」
「どうと言いますと?」
「あなた。余計なお世話よ」


重さんの質問に首を傾(かし)げていると、奥から出てきた恵子さんが制する。

なんの話?


「心春ちゃんも、そろそろそういう歳頃だろ? あの人が旦那だったら最高じゃないか」


もしかして私の結婚の話をしているの?
しかも天沢さんと?

さすがにあんな素敵な人にはもうそういう相手がいるだろう。


「あのねぇ、最近はそういうのもセクハラって言われちゃうんだから。あれだけの行動力がある人なら、あなたがお膳立てなんてしなくてもばっちり決めるわよ」


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