別れを選びましたが、赤ちゃんを宿した私を一途な救急医は深愛で絡めとる
そんな話は初耳だし、この傷について打ち明けたのもほんの少し前の話だ。

そもそも私たちが出会ったのはつい最近で、陸人さんが医者になったのはそれよりずっと前でしょう?


「とぼけてるの?」
「いえ。どういうことなのか私にはさっぱり……」


正直に言うと、彼女は目を見開き、そして深いため息を落とした。


「陸人さんがかわいそうよ」
「どういうことでしょう?」


私の知らない真実が隠されているようで、気がはやる。


「あの誘拐事件でケガをしたのは、お気の毒だと思います。でも、陸人さんだって被害者なの。たまたま一緒にいたあなたが襲われただけで、その傷を負ったのは陸人さんだったかもしれない。それなのに、彼はずっとあなたに申し訳ないと罪の意識を背負い続けて……」


待って。誘拐事件ってなに?襲われたって?


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