別れを選びましたが、赤ちゃんを宿した私を一途な救急医は深愛で絡めとる
やはり私は歓迎された花嫁ではなかったのだ。


「勘違いしないで。陸人さんがあなたと結婚するとしたら、贖罪(しょくざい)の気持ちだけ。あなたを愛してなんかないの」


彼女の辛辣な言葉に、心が凍っていく。


「この結婚では、誰も幸せになれないわ。いえ、あなたはいいのかしら。優秀なドクターを夫にできて、過去の懺悔(ざんげ)をさせられるんだもの。でも、陸人さんは針のむしろよ。それがわかっているのに結婚という選択をした彼の優しさ、あなたにわかる?」


吉野さんは目にうっすらと涙を浮かべる。


「恨むなら、犯人を恨みなさいよ。陸人さんを縛りつけないで」


混乱する私はなにも言い返せない。

そもそも、その誘拐事件が本当にあった出来事なのかどうかすらわからないのだ。

当時の主治医は、記憶を失ったのを自己防衛反応だと話していた。

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