別れを選びましたが、赤ちゃんを宿した私を一途な救急医は深愛で絡めとる
私はそれでよかったけれど、自分の身がわりに私がケガを負ったと思っている陸人さんは、ずっと苦しんできたのだろうか。


「身を引いてくれませんか?」

「えっ?」

「陸人さんを愛しているのなら、もうこれ以上彼を苦しめないで。彼はこれが贖罪のための結婚だなんて絶対に言わないでしょう。でも、間違いなくそうなの。もう解放してあげて。彼だって自分の人生を歩む権利はあるでしょう?」


感情的にまくしたてる彼女だけれど、その気持ちはわからなくもない。

もしこの話が本当ならば、陸人さんは自分の人生を私に捧げるつもりなのだろう。
――彼に落ち度はなかったとしても。

それくらい優しい人なのだ。

私の傷を治すために外科医になったというのも信ぴょう性がある。
だから傷の治療にも詳しかったのだ。

けれども、記憶がない私にはそれが真実かどうかわからず、ただ頭を抱えるだけ。


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