別れを選びましたが、赤ちゃんを宿した私を一途な救急医は深愛で絡めとる
ううん。過剰な期待を抱いたら、ダメだったときにつらいだけ。

私は重さん夫婦にかわいがってもらえて、おいしいまかないまで食べられるこの生活が気に入っている。今でも十分幸せだ。


「あっ、いらっしゃいませ」


今度は女性客が入ってきたので、私は再び笑顔を作り、接客に移った。



ランチの時間が過ぎると、店には静寂が訪れる。
といっても、調理をする重さんの手伝いがあるので、まだ忙しい。


「心春ちゃん、いんげんの筋取ってくれる?」
「わかりました」


味付けは全部重さん。
恵子さんですら手出ししない。

恵子さんはその代わり、食品問屋の担当者との折衝を請け負っていて、値切り上手のしっかり者だ。今は銀行に行っている。


「そういえば、前に教えてもらったサバ味噌、すごくおいしくできました」
「ちょっと手間だけど、霜降りすると格段においしくなるよね」


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