別れを選びましたが、赤ちゃんを宿した私を一途な救急医は深愛で絡めとる
陸人さんの口から漏れた自分の名前に、どうしたって顔がゆがむ。

離れてから、何度彼にそう呼ばれる夢を見たことか。


「失礼します。天沢先生。Ⅲ度熱傷のクランケを受けたのですが状態が悪くて、手が空いたらお願いできませんか?」


先ほどとは違う看護師がやってきて、陸人さんに耳打ちした。

一瞬にして緊張が漂う。


「了解。本宮さんの次回の予約を頼む。主治医は俺がやる」
「わかりました」


当直明けだと最初のクリニックの先生が話していたのに、また別の患者さんの治療も担当するんだ。

看護師とのやり取りが済むと、陸人さんは再び私をじっと見つめる。


「本宮さん、これで失礼します。凛ちゃんの傷を治すために、次回も必ず受診してください。約束していただけますか?」


気迫のこもったその言葉に、私はうなずくしかなかった。



凛はすぐに元気を取り戻した。

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