別れを選びましたが、赤ちゃんを宿した私を一途な救急医は深愛で絡めとる
とはいえ、最近は恋愛以外には前向きになってきた。

前の会社にいた頃は、日々の人間関係に疲れてしまい、家から出ることも少なかった。

けれども、一生ひとりでもいい、でも人生は楽しみたいと考えるようになったら、重さんに料理を教わるのが楽しくなり、自立したいと思い立ってひとり暮らしも始めた。

前職より給料は減っているので贅沢はできないけれど、重さんが残り物をたっぷり持たせてくれるので食費があまりかからず、楽しく暮らせているのだ。


「ありがとうございます。重さんは、どうして味楽を辞められたんですか?」


味楽のほうが給料もよさそうだし、こんなに朝から晩まで働かなくてもいい気がする。

それに〝味楽の板前〟なんて、この業界では賞賛される立場のはずなのに。


「恵子がさ、言うんだよ。味楽は特別な客しか行けない。幸せになれる料理を作れるのに、皆が食べられないなんて残念だって」


そうだったんだ。

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