別れを選びましたが、赤ちゃんを宿した私を一途な救急医は深愛で絡めとる
たしかに政治家も御用達にしているという高級料亭の味楽は、敷居が高すぎて庶民には通えない場所だ。


「それで辞めて弁当屋やるって言ったら、あんたバカ?って。お前が言ったんだろってケンカになって……」


重さんはそのときを思い出しているのかクスクス笑っている。

でも、味楽を辞めて弁当屋とは、普通はない発想だ。恵子さんも腰を抜かしたのだろう。


「恵子が、辞めろだなんて言ってないでしょって怒るからさぁ、俺の味で皆を幸せにする。お前も幸せにしてやるって啖呵切ったんだ。俺、かっこいいだろ」


茶化した言い方をする重さんだが、照れくさいのかほんのり頬が赤くなっている。


「恵子さん、幸せですね」
「それがよー。朝から晩まで働き通しで、どこが幸せなの!って鬼の形相だよ。まあ、俺は今のほうが幸せだけどね」


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