別れを選びましたが、赤ちゃんを宿した私を一途な救急医は深愛で絡めとる
傷のせいで陰口を叩かれて、人と会話を弾ませるのが苦手になってしまったこと。
恋愛も怖くてできないことを正直に打ち明けると、恵子さんは涙を浮かべて抱きしめてくれた。

『こんなに真面目ないい子なのに。うちの娘にしたいくらいだ』と重さんまで励ましてくれて、今に至る。


それから実の娘のようにかわいがってもらえたおかげで、ふたりと話すときは緊張もしない。

こんな私を受け入れてくれるふたりに恩返しがしたいと、必死に働いてきた。


重さんたちが私のことを本気で心配しているのはわかっている。

でも、醜い傷を抱えた妻なんて、誰だって嫌なはずだ。

重さんは、『傷も丸ごと受け止めてくれる人が必ずいる』と励ましてくれたが、今までさんざんつらい思いをしてきた私には、どうしてもそうは思えない。

好きな人に傷があることを告白して、顔をしかめられたら耐えられない。
それなら最初から近づかないほうがいい。


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