別れを選びましたが、赤ちゃんを宿した私を一途な救急医は深愛で絡めとる
「俺も、心春に会わせてもらえないとわかってしばらく泣いたよ。でも、少し成長したら理解できた。俺だって包丁を向けられたあの瞬間を忘れられなくて苦しんだんだ。ケガをした心春に、これ以上つらい思いをさせたくないというご両親の気持ちは、よくわかった」


やはり事件の記憶をなくしたことで、私は平穏に生きてこられたのかもしれない。

心療内科の医師も、記憶がないのは自己防衛反応だと話していたし。


「でも、心春と俺が仲がいいのを知っていた謙一くんは、心春について知りたいと言う俺を拒否しなかった」


ふたりがそんなふうに見守ってくれていたとは。


「兄も味方してくれたんですね」

「そう。結婚の挨拶に行ったとき、謙一くんに『あの事件の罪滅ぼしのつもりか?』と聞かれて、違うと話した。必ず幸せにすると約束した」


そういえば、ふたりはなにやら話し込んでいた。
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