別れを選びましたが、赤ちゃんを宿した私を一途な救急医は深愛で絡めとる
「どうした? 嫌なことを思い出すのはよくない。もう考えないで」


陸人さんは私の肩に手を置き、心配げに見つめる。


「違う。違うんです……」
「心春?」
「私、陸人さんと……結婚……」


そう言うと、彼は頬を緩めてうなずく。


「うん。指切りしたんだ。大きくなったら結婚しようねって。僕のお嫁さんになってって」


そうだ。
しかも一度じゃない。何度も指切りしたような気がする。

結婚するということがどういうことなのかよくわかっていなかったくせに、陸人さんとずっと一緒にいられるのがうれしくて、指切りを繰り返したような。


「陸人くんって呼んでましたよね」

「懐かしいな。そう呼ばれてた。俺は心春ちゃん、だった。楽しかったなぁ」


長い間鍵がかがって開かなかった引き出しが、少しずつ開いていく。
でも全部はまだ思い出せない。


「陸人さんのこと、なんで忘れちゃったんだろう……」

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