別れを選びましたが、赤ちゃんを宿した私を一途な救急医は深愛で絡めとる
兄は私の頭をグシャグシャッと撫でてから立ち上がり、陸人さんのほうに歩いていく。

そしてなにやら言葉を交わすと出ていった。


「心春」


優しい声で私の名を口にした陸人さんが近づいてくる。

その表情は晴れやかで、とても叱られてきたようには見えない。


「陸人さん、実家に行ってくださったんですか?」


立ち上がって尋ねると「俺もケーキ食べようかな」と、私を座らせる。

すぐにメニューをめくって店員さんを呼び、「ガトーショコラと紅茶を。彼女にも紅茶のお替わりを」と注文した。


「謙一くんから聞いたの?」
「はい。叱られに行ったって」


私は焦っているのに、彼は終始穏やかだ。


「そんな大げさな。まあ、怒ってはいらっしゃった」


きっと罵倒されただろうに悠然と語る彼が信じられなくて、瞬きを繰り返す。


「でも、幸せな時間だった」
「幸せ?」


叱られたんでしょ? どうして?


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