別れを選びましたが、赤ちゃんを宿した私を一途な救急医は深愛で絡めとる
「いえっ。俺が借りたら心春さんが困りますよね」


心春さんと名前を呼ばれて、ドキッとした。
どうして知っているんだろうと思ったけれど、さっき重さんが呼んでいたっけ。


「もう一本ありますから大丈夫です」


本当はこれしかないけれど、先日助けてもらったお礼だ。


「そう……ですか。それではお借りします」
「はい。お仕事、お疲れさまでした」
「失礼します」


彼は私に微笑みかけてから雨の中を出ていった。

それからすぐに閉店の看板を出し、厨房で片づけをしている重さんと恵子さんに挨拶に行く。


「店頭、片づきました」
「心春ちゃんもコロッケ持っていきな。弁当も」


洗い物が終わった重さんが、手を拭きながら言う。


「助かります。いただきます」


こうして売れ残った弁当や、余ったおかずをいつも持たせてくれるのだ。


「明日は休みだし、ゆっくりしてね。心春ちゃん、なんとなく顔色悪いよ」

< 29 / 335 >

この作品をシェア

pagetop