別れを選びましたが、赤ちゃんを宿した私を一途な救急医は深愛で絡めとる
「とんでもない。お礼を言うのは俺のほう。心春さん」


サイドブレーキをかけた彼が私を見て真剣な顔をするので、ドキッとする。


「本当に調子悪くない? 元気そうには見えるけど、やっぱり顔色がよくない」


ずっと気にしててくれたのか。


「平気です。ちょっと疲れたのかな」
「ほんとに?」


天候が悪いせいか、やはり傷が痛む。
慣れたとはいえ、つらくないわけではない。それに……。


「ごめんなさい。実は今日、失敗してへこんでました。重さんが機転を利かせて助けてくれたんですけど、いつも助けてもらってばかりの自分が情けなくて。でも、天沢さんの話を聞いていたら心が軽くなりました」


正直に話すと、彼はふと頬を緩める。


「よかった。でも、つらそうだよ。……車、持ってないんだよね?」
「はい」


私が答えると、彼はジャケットの内ポケットからメモ帳を取り出してなにやら書き始めた。


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