別れを選びましたが、赤ちゃんを宿した私を一途な救急医は深愛で絡めとる
「これ、俺の携帯。もし気分が悪くなったりしたら電話して。救急担当してるから、一応役に立つと思う」


救急?
すごい人なんだ。


「そんな、とんでもない」


これ以上振り回せない。


「心配で帰れないから受け取ってくれない? 俺に番号を知らせるのが嫌なら、非通知でかけてくれればいいから」


彼は少し強引に私にメモを握らせた。

そして私が貸した傘をさして車を降り、わざわざ助手席側に回り込んできてくれる。


「こんなに親切にしていただいて、すみません」
「だから、したくてしてるんだよ。心春さんが魅力的な人だから」


彼は優しく微笑むが、褒められた私は少し照れくさい。


「……ありがとうございます。遅くなっちゃいましたね」
「俺、明日休みだから平気。この傘、借りててもいい?」


「もちろんです。今度は本当にもう一本ありますから。気をつけて帰ってください」
「うん、おやすみ」


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