別れを選びましたが、赤ちゃんを宿した私を一途な救急医は深愛で絡めとる
彼の優しい気持ちを受け取った私は、頭を下げてから部屋のある二階への階段を上がった。

部屋の窓から外を覗くと、天沢さんの車が小さくなっていくのが見える。


「素敵な、人」


しかも話しやすくて、普段は隠しておく胸の内までいつの間にか明かしてしまった。

そのときふと『あの人が旦那だったら最高じゃないか』という重さんの言葉が頭をよぎる。

そんな奇跡が起こったらうれしいけれど、私にはとても……。

天沢さんは雲の上の人なのだ。
それに、彼には深く愛する女性がいるようだし。

私は握りしめていたメモに視線を送った。そこには電話番号と名前が書かれてある。


「天沢、陸人(りくと)……」


その名前を見た瞬間、なぜかゾワッとした。

なんだろう、この感覚。
陸人という名前に見覚えがあるような、ないような……。

でも、すごく珍しい名前でもないし、大学の同級生にでもいたのかも。

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