別れを選びましたが、赤ちゃんを宿した私を一途な救急医は深愛で絡めとる
私は不思議に思いながらも、シャワーに向かった。


体が冷えた今日はお風呂に浸かりたいのだが、この傷は温めると悪化する。

着替えの準備をしたあと、洗面台の前で考える。

ケガをしなければ、違う人生があったのだろうか。

大きくて深い傷をまともに見るまでにかなり時間がかかった。
そして赤く腫れあがるそれが自分の体の一部だと受け入れるのには、さらにかかった。

そのうえ、傷を知った同級生たちに気持ち悪いと線を引かれて、どれだけ傷ついたか。

まだ友達と遊ぶのが楽しくてたまらなかった年頃の中傷は、私の心をズタズタに引き裂いた。

でも……。


「魅力的な人、か……」


天沢さんにもらった言葉を繰り返す。

傷のことさえ漏らさなければ、そう言ってくれる人もいるんだ。

どうか、彼には知られませんように。
また楽しい話ができますように。


服を脱いだ私は、目を閉じて右肩から脇腹に続く傷に触れる。
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