別れを選びましたが、赤ちゃんを宿した私を一途な救急医は深愛で絡めとる
「そうね。忙しいからちょっと寂しいんだけど……」


と口にしながらも、幸せ全開の顔をする絵麻がうらやましい。

「私はいいのよ。心春は?」
「……私はなにもない」


と言いつつ、やっぱり天沢さんの顔が浮かんだ。


「あれー。なんかありそう」


長く一緒にいるからか、彼女はすぐに私の気持ちを見抜く。


「なにも、ないよ?」
「ちょーっとピザ置こうか。それで?」


これは逃れられそうにない。
私は正直に天沢さんに親切にしてもらったことを告白した。


「なにその王子さま」
「王子さまって……」
「絶対心春のこと気になってるよ。そうじゃなきゃ、家まで送ってくれたりしないって」


絵麻はそう言うけれど、優しい彼は体調が悪そうだった私を放っておけなかっただけだ。
それに……。


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