別れを選びましたが、赤ちゃんを宿した私を一途な救急医は深愛で絡めとる
陸人さんはそんなふうに言うけれど、私が名乗ってから妙な雰囲気になったと感じたのは気のせいだろうか。


「陸人さん、きっとご両親の自慢の息子さんなんでしょうし、私が妻では力不足ですよね」


もしかしたら両親は、優秀な彼の妻にはしかるべき家柄のお嬢さんを望んでいたのかもしれない。

お父さまの友人の娘ともなれば、いわゆるお眼鏡に適った人だったのだろう。

それなのに、その相手ではなかったのでがっかりしたんだ、きっと。


「心春は俺を幸せな気分にしてくれるじゃないか。どこが力不足なんだ。そんなふうに思わなくていい」
「……はい」


うなずいたものの、胸のモヤモヤは消えない。
そう思っているのは陸人さんだけなのかもしれないのだから。



不安が渦巻いたまま、次は私の実家へと向かった。
車を降りると、陸人さんはしきりにネクタイを直している。


「はー。どんなオペより緊張する」
< 99 / 335 >

この作品をシェア

pagetop