マリアの心臓
小首を傾げるアタシから興味が失せたらしく、
ひとりは、ヘッドフォンを耳にあて
ひとりは、通知のきた携帯をいじり
エイちゃんのいる下駄箱のほうへ去っていく。
「やべ。ボク、一限サボんなきゃ」
「あ、おれも。呼び出されたわ」
「おまえまたオンナか」
「鈴夏もたいがいだろ」
「まあね。……あっ、衛~。衛もばっくれようぜ~」
「……来たばっかだってのに何だよ」
「一応2年のくせに、1年をサボらせようとすんな」
キラキラした、イケメン三人衆。
周りの女の子たちが、一定の距離を開けて、沸き返ってる。
「今日もかっこいい~~!」
「朝から拝められて幸せ……」
「鈴夏センパイ、オキニのパーカー着てる! 同じの買っちゃおうかな!?」
「羽乃くん、また髪染めたのかな? ぶっちぎりで校則違反してんのまじかわいい」
「でも、やっぱり……」
「一番は、あのヒトだよね!」
「衛さまーー!!」
「顔面国宝……尊い……」
「あれで不良なのやばくね? どこかの映画ですか?」
「推します」
きゃっきゃと騒ぎ立てる女の子たちに圧倒される。
ガン見しすぎていたのか、女の子たちがこちらに気づいたとたん、それまでの興奮が一斉に凍てついていく。
……ふしぎ。世界が、遠く感じる。
“悪女ちゃん”なアタシは、あっちには近づかないほうがいいのかな。
でも。
それじゃあ。
彼女の、優木まりあの想いは、どうなるの……?