マリアの心臓


紆余曲折を経て、あの口説き文句を言ってくれたってことか。

なのに「痛い」と誤解しちゃうなんて、二度も勇気を踏みにじったようなものじゃん。アタシのバカ!




「ごめん……でも、いやだったの」

「ほら!」

「他のヒトなんて見ないでよ!」

「そうやってきらって…………え?」




反省するところが多いなら、その分、伝えなくちゃ。

これが本物の愛だって!




「今、誰に、なんて言った?」

「こんなにも美しく、凛々しく、情熱的なあなたの一番は、アタシじゃなきゃ、いやなの……っ」

「え? え……??」

「アタシに王子さまなんか必要ない。あなたと、仲良くなりたい」




一歩、また一歩、詰め寄っていく。

もはや形勢逆転し、彼女は圧倒されまくり。全身赤いんだか青いんだか、もうわからない。


あともうひと押し!
がんばって甘く装った顔面を、グイと前のめりに近づけた。




「ねえ。アタシじゃ、だめ?」


「――何してんだ」




返事をもらうより早く、横槍を入れられた。

低く、荒く、けれど耳なじみのよい声。




「え、衛さま……!?」




入口から余裕綽々と現れたエイちゃんに、隅で固まる女の子たちが甲高い声を上げる。


なんでここにエイちゃんが……!?

彼もこの劇の演者だったの?




「とうとう来やがった!」

「た、戦うか?」

「い、いや、でも今は……そっちよりもあっちが……!」

「あの子、どうするんだ!?」




ざわざわと異様な空気に包まれ、周囲はごくりと固唾を飲む。


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