マリアの心臓
「……っ、ごめんなさい」
「ハッ、やっと自分の立場がわかった?」
怒るのも無理はない。
アタシはどれだけ彼女の気持ちを傷つけただろう。
劇とはいえ……ううん、大事に作られてきた劇を、台無しにしてしまいかねなかった。
アタシを代役にすることも、反対だったのかもしれない。
そんなヒトに、どうしたら言葉が、心が、伝わるだろうか。
「あんたがお姫さまなんて、笑わせるわ」
うん。そうだね。
アタシは、お姫さまの役じゃなかった。
「お姫さまは、あなただったね」
「そう、…………え?」
「気づくのが遅くてごめんなさい。でも……きらいにならないで?」
上目遣いで見つめると、それまでの彼女の威勢がしおれていく。
「は……え……? な、なによ、わたしにまで媚売る気……?」
「そんな……! それこそ勘違いよ!」
「そ、そもそも、あんたが先にきらってきたんじゃない! だから、わたしは……!」
「きらうわけない!」
ぴしゃりと言い放てば、彼女は一瞬押し黙る。
けれど、またすぐ、震えた声を投げつける。
「ヒトの告白を邪魔したくせに!」
「……こ、告白?」
「覚えてないとは言わせない。わたしが勇気出してあのヒトに告白しようとしたのに……っ」
そういう設定もあるんだ!?