追放されたハズレ聖女はチートな魔導具職人でした2
自らの加護をモチーフとする場合が多く、動植物の加護を持っている聖女はベールのどこかにそれをシンボル化してあしらうことが多く、自然現象の加護を持つ聖女の場合はベールの形そのものを自らの加護に合わせる場合が多かった。

「くるくるー」

「きゅきゅきゅきゅー」

ベールを頭に載せ、しわにならないように丸めておいたシースルーの布を伸ばす。

今回のココのベールは、この旅の出発に合わせて王太后スフェンから譲られたものだった。

これといった意匠は施されていないものの、かつて教会から王家へと譲渡された古き時代の聖女の持ち物で、謂れとしてはこれ以上の格式はないと言ってもいいだろう。

もちろん、王家と教会の関係を考えて『下賜』という体裁は取っていないものの、実質的にはスフェンからココに与えられたものだ。

スフェンはココに大きな期待を寄せ、それを示すために王家の宝でもあったこのベールを渡したのである。

(王太后様、気前のいい人だなぁ)

もっとも、そんな事情はココには通用しない。

かつて生きていた世界では格式とは無縁で、この世界でも農村に生まれて学園に入学するまでは泥だらけで過ごしてきたのである、上流階級の機微など察しろというほうが無理だった。

「六郎、ナナ、どう? 変じゃない?」

「きゅっ!」

「…………」

一声鳴くナナと、無言で頷く六郎。

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