追放されたハズレ聖女はチートな魔導具職人でした2
門兵がそういって膝を突くと、ココは小さく腰を折って礼に応える。

「お出迎え、ありがとうございます。街に入ってもいいですか?」

このような時にどう振る舞えばいいのかは、岩窟神殿にいた頃、村長やイワミ商会の商人などから教わっていた。

門兵は顔を伏せたまま、門の奥を示す。

「無論です。信仰に閉ざす門を、我が町は持ち合わせておりません。どうぞ、街の者たちにも聖女様のお声をお聞かせください」

これが貴顕相手であれば、人々に顔を見せてほしいと言っただろう。だが、聖女相手ならば、声を聞かせるという言葉になる。

聖女はベールで顔を隠し、人々はそれを覗き込むような真似はしない。

だからこそ今のやりとりのように、門兵は決して顔を上げず、ココもまた顔を上げるようにとは言わないのだ。

「ありがとう」

無論、聖女の顔を見る機会が本当に、まったくないのかと言えばそのようなことはない。

ベールが風で揺れることもあるし、聖女も神殿の中では顔を晒していることも多い。しかし、何ごとにも形式はある。

「では、ココ様、参りましょう」

「はい!」

グラナイトに先導され、ココは街へと入る。

その後ろを五郎が続き、六郎は門の脇に移動して膝を突いた。

「…………」

彼の巨体では、街中で動き回るのは現実的ではない。

主からの呼び出しがあるまで、彼はただ静かに、その姿の通りに石像として佇むのだった。
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