離婚しましたが、新しい恋が始まりました


(この人は何を言っているんだろう……)

紬希は早朝のぼんやりした頭で考えを巡らせた。

(あ、もしかして……、秦野と名乗っていた頃、会ってたかしら?)

「光宗先生、もしかしてK大医学部のご出身ですか?」
「ああ」

沢村医師の同級生なら元夫の秦野貴洋とも同じ年齢だ。K大医学部にいたなら私が秦野の妻だと思い込んでいるかもしれない。

今は(・・)有沢(・・)紬希です」
「ん?……ああ、そうか」

光宗は、一瞬その意味を考えた様だが、すぐに納得した顔をしていた。紬希が秦野とは離婚しているとわかったのだろう。

「急ぎますので、失礼します」

足早にコンビニから立ち去りながら、紬希は嫌な思いに囚われていた。久しぶりに元夫の知人に会ってしまったので、胸の奥から過去が蘇ってきたのだ。

それは思い出したくもない、元夫との日々で壊れてしまった女としての感情だった。

自分が女としていかに魅力がないのか痛感した結婚生活。
愛される歓びを知らない身体。
夫に満足してもらえなかった妻。

(私なんか、結婚相手として最悪よね……)

そこまで自分を卑下してしまうようになった結婚だった。


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