離婚しましたが、新しい恋が始まりました


来客用の食堂と応接室を開放して、30名ほどの立食パーティーを開く予定だ。
すでに会場のセッティングは出来上がっていたから、紬希はマントルピースに父の遺影を飾ってその周りを白百合で囲んだ。

(お父さん、ただいま)

写真の父は微笑んでいる。上品でキリっと凛々しい顔だ。紬希は父親に似ているが、母に似たかったなと写真を見て思う。こんなキツイ顔ではなく、優しそうな母に似たかった。

母は際立った美人ではないが微笑むと愛らしい人で、物静かな人だった。亡くなった頃はまだ幼かった紬希にはあまり記憶が無いが、婿に入った父をいつも立てるように振舞っていたらしい。
だが、控えめな態度が父には物足りなかったのだろう。再婚相手の逸子は銀座では名を馳せていた、年齢を感じさせないグラマーな美女だ。
亡くなった母とは正反対の女性と再婚した事で、紬希は父を尊敬する事が出来なくなっていた。父だって男だったという事だ。

「あら、お義姉さん。帰ってたの?」
「結衣、おはよう」

部屋に入って来たのは、楽そうな部屋着のままの結衣だった。

「あれれ、今日はその服で出席する気?」

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