離婚しましたが、新しい恋が始まりました


離婚しても、紬希に帰る家は無かった。

有沢家を継ぐのは紬希のはずだったのに、父亡きあと、実家は義母の逸子(いつこ)と連れ子の結衣(ゆい)が独占している。そんな家に帰りたくもなかった。

舅だった佑介の配慮がなければ、今の生活は出来なかっただろう。それなりの慰謝料をもらった紬希はマンションを購入して一人暮らしを始め、看護師の仕事に戻った。

父が亡くなってからは逸子や結衣に、結婚してからは姑の八重子や秦野医院の古参の看護師たちに気を遣って生きてきたのだ。

(一人で暮らすって、何て楽なんだろう)

今、紬希は心からそう思っている。



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