離婚しましたが、新しい恋が始まりました


「良かったら、晩ごはんどうですか?」
「あ、でも……」
「近くに、安くて旨い定食屋があるんです」

桂木は気安い調子で誘ってきた。高級なレストランではなく、定食屋というセレクトも安心できた。

「いいですね!実はお腹ペコペコで」
「仕事の後だったらエネルギーを補給しないと」

看護師は肉体労働だから自分の前でも気取らずにたくさん食べろと言ってくれているのだろう。

「そういえば、この前も良く召し上がっていましたよね」
「もう、言わないで下さい」

二人で笑いながら定食屋へ向かった。こんなに気軽に男性と話すのはいつ以来だろう。

初めて会った時から、桂木は男っぽくなかった。その優し気な面立ちが、こんなに楽な気分にさせるのかもしれない。紬希は彼から少し離れて、やや後を歩いていた。
楽な調子でお喋りは出来ても、腕が触れ合うような距離にはなれない。
その微妙な距離感に桂木は気がついていないのか、屈託なく紬希に話しかけてくれた。


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