離婚しましたが、新しい恋が始まりました
「……聞くだけよ。先生とは科も違うし、めったに病院でも会わないから期待はしないで」
「ありがとう!」
いつになく結衣は笑顔を見せて、ご機嫌で帰って行った。
そんなに光宗の事が気に入ったのだろうか。ひと回り年齢は離れているし、忙しい医者の妻が結衣に務まるとは思えないのだが……。そう考えている自分に気がついて、紬希はハッとした。
(嫌だ、私ったら義妹に嫉妬してるみたい)
母親に結婚相手を決められそうだという、結衣の言葉に同情しただけだ。
自分も周りの意見に流されて結婚した過去があるだけに、義妹には幸せな結婚をしてほしい。
あの日……大勢の招待客を迎えながらも披露宴の間ずっと心細くて震えていた自分を思い出す。
ただ一言、『お綺麗ですよ』と言ってくれた人の言葉を頼りに笑顔を作っていたのだ。
(まさか、その人が光宗先生だったなんて)
紬希の心は、ほんの少し揺れていた。
(結衣と光宗がもし結婚したら……私たちは家族になるの?)