離婚しましたが、新しい恋が始まりました
優しい声が紬希に聞こえてきた。それからゆっくりと光宗の手が伸びて来て、壊れ物を扱うように紬希の頬を指先でなぞった。
「もう、泣くな」
「先生……」
男性に触れられたのに、ちっとも嫌悪感が湧いてこない。
彼の手は温かくて優しくて、けっして紬希を痛めつけるものではないと思えた。
少し涙がおさまると、ポツリポツリと紬は話を続けた。
「……秦野さんには申し訳ないことをしました」
「何故?」
「恋人がいたのに、私との縁談を断れなかったんだと思います」
それは違うと、大きな声で言いたかったが磐は黙った。まず彼女に溜まっていた物を吐き出させた方がいいと考えたのだ。
「でも、彼の恋人が妊娠したって聞いて……」