離婚しましたが、新しい恋が始まりました
夏の深夜、魔が差したのかも知れない。紬希はこれまで抑えていた本当の気持ちを話し始めていた。
「あの頃の私、実家から逃げ出したくて安易に結婚に逃げたんです」
「あの家族なら……そうだろうな」
紬希の性格では、あの義母や妹とは合わないだろう。逃げ出したくなる気持ちはわかる。
「深く考える時間もなくて、義母や貴洋さんのお母さんに言われるままに……」
日取り、式場、衣装、招待客、それにハネムーンの行き先まで決められてしまった。
秦野家への遠慮もあったし、紬希の意見など誰も聞いてはくれなかった。
「もう、何も考えられなくなって周りに流されてしまったんです」
「そうだったのか」
「披露宴の時にふと気がついたら、あの大勢のお客様の中で一人ぼっちになった気がして」
それで、あんな哀しそうな顔をしていたのかと、磐は思い至った。
「私には一人も見方がいないんだと落ち込んでいました」
幸せに輝くはずの日が、望んでいなかった人生のスタートの日になっていたのだ。
「だから嬉しかった。先生に声をかけてもらえた時……」
「ああ、君は綺麗だった。すごく綺麗だったよ」
紬希の頬を、一筋の涙がツーッと流れた。これまで我慢していた涙が溢れてきたのだ。
「触れていいか?」