離婚しましたが、新しい恋が始まりました
「君に価値がないなんて……」
「先生、苦しい」
シートベルトの締め付けが苦しくて、紬希が自分の手でベルトを外すと磐はもっと強く抱き寄せた。
「ここにいるじゃないか、君が欲しくてたまらない男が」
正面から彼女の顔を覗き込む。切れ長の大きな目は見開かれて、真っ直ぐに磐を見つめていた。
「あの日から、どれだけ君に焦がれていたか」
「あの日?」
「結婚式の日だ。初めて会った日に君が人妻になっていたから諦めていたんだ」
「私の事を……」
「今日だって君に会えると思って、有沢家にのこのこ行ったんだぞ」
少し不貞腐れた様に磐は言った。恋しい人に会いに行ったのに、その義妹が玄関に現れた時どれだけ自分の迂闊さを呪ったか。
「君を想う気持ちを知って欲しかった」