離婚しましたが、新しい恋が始まりました


紬希の胸には木霊のように光宗の声が聞こえていた。

「君が好きだ」


もう何年も誰からも言われた事のない言葉だ。
結婚していた間に、貴洋からは一度も言われていなかった。

(光宗先生が、私を好きだって言っている)

それは夢のようで、すぐに消える幻のような言葉に思えた。


「キスしていいか?」

(ああ、この人は優しい。私に触れる時もキスしたい時も無理やりは求めてこないんだわ)


貴洋はいつも強引だったので、あの頃の身体の痛みが蘇ってきた。
でも、見つめ合っている目の前の人の眼差しは蕩けそうに優しかった。
紬希の心は温かく満たされていった。

(この人となら、大丈夫かもしれない)


そう思えた時に、紬希は自然に目を閉じていた。


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