きみの瞳に映る空が、永遠に輝きますように
「ねぇ、学校を辞めてもいいかな」
お風呂上がりの父に心の内を打ち明けた。
父は意外な表情をするのかと思いきや、いつかそう言われるのを覚悟していた、とでも言うように表情を変えなかった。
私が決断をしたのは透真くんが学校を辞めたことが直接的な理由ではない。
たしかにその生き方も悪くはないとは思ったが、真似をしようとまではいかなかった。
だが、これ以上の回復が見込めず、余命宣告通りになりそうなら、学校に通う意味はないだろう。
「本当にいいのか?」
それに私は小さく頷いた。
「うん。あと、学校を辞めても生きることを辞めたわけじゃないから悲しまないでね」
私がそう言うと父は再び、そうか、と言った。
夢見病と闘いながら勉強をして挑んだ高校受験。その結果、晴れて合格し、入学した高校。
大学も同じ志望校を掲げた星絆と、離れたくなくて一緒に勉強した日々。
無事に合格してからは、最低限の単位を取るだけで簡単に卒業できると思っていた。
いくら夢見病でも不治の病だとしても、少しくらい希望はあるものだと思っていた。
そして、その希望のひとつが、私にとってはそれが高校を卒業することでもあったのだと思う。
家では私が夢見病であるという理由で父は必要以上に私を心配する。
しかし、私が夢見病であることを知らない学校や友人は私の唯一の日常だった。
山積みの課題も、面倒な係活動も、今思えば全てが幸せだったのかもしれない。
今後、学校には行けないとは分かっていてもいざ籍が無くなると思うと胸にくるものがある。
父は俯いたまま、あぁ、と掠れるような声で言った。
この時、この選択が正しかったと、私の関わった誰もが思えるように、そして、父が誇れるように、思い出を沢山作っていかなければならないという責任感が芽生えた。