きみの瞳に映る空が、永遠に輝きますように

 開園直後の遊園地は家族連れやカップルで賑わっていた。

 向かいから幼稚園児が私たちをじっと見て、いいな、と言った。

 彼からすれば私たちもカップルに見えてしまうのか、と微笑ましく思う。
 
 にしても羨ましがる年齢にしては早いと思うが。

 「まず何に乗りたい?」

 そう言うのはグレーのカーディガンを羽織り、ダボっとしたジーンズを身に付けている透真くんだ。

 首からはブルートパーズのネックレスが輝きを放っている。
 
 「メリーゴーランドは?」
 
 「いいね、乗ろう」

 賑わっているというのはどうやら園内で開催されている特別なイベントで、アトラクションは並ばずに乗ることが出来るほどの空き具合だった。

 アトラクション目的の私たちには持ってこいの日だ。

 「全部乗るか?」

 心を弾ませた透真くんはそう言った。

 「ジェットコースターは乗れるの?」

 「俺、遊園地は初めてだから分からないや。でも、夢の中なら死なないし何とかなるだろう」
 
 これには私も頷くだけだ。

 死を割り切って考えているのか、今を楽しもうと全力なのか、正確には分からないが、私には後者のような気がした。

 それには、透真くんらしい、と感心した。

 そして、私も心の底から楽しもう、と決意した。

 「もう乗れるらしいぞ」

 透真くんは走って先を行く。

 心なしか時間に追われているようにも思える透真くんを必死に追いかけた。

 彼の後ろ姿に、公園で会ったあの日の透真くんが重なる。

 あれこそ夢なのか夢ではないのか今となっては分からない。

 だが、私の運命が動いたあの日が鮮明に蘇る。

 そして、視線の先には今の透真くんではなくあの日の透真くんが見えていた。

 ジャージを身に付け、額からは大汗を流しているあの日の彼の姿が。

 「大丈夫か?」

 違和感を覚えたのか、先を行っていた透真くんは引き返して無事を確認すると、私の手を引いて走った。

 その透真くんは今日の透真くんに戻っていた。

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