お館様の番選び
陽は鉄格子の間から両手を伸ばし僕に掴みかかってきた。

僕は呆然と陽を見ていた……。

陽っ陽っ……なぜだか陽の姿と自分の姿が重なって見える。

…これは僕だ。一歩間違えばこの中にいるのは僕だったかも知れない……。

はっ、気がつくと僕は力が抜けて地面に座りこんでいた。

「…朧。繭はね…僕の腕の中にいるのが繭にとっての幸せなんだ。僕とドロドロに甘く溶けあって……啼いて……悦んで…僕に酔ってっ……」

「………。」

「一族に僕が裁けるのか?…朧だって分かるだろ?僕達は所詮、獣だって……。その血がどれだけ番を求め愛するのか………。」

「………。」

「……でもなんで…かなぁ。朧……繭は僕を抱きしめて…愛してるっていいながら……僕の名を一度も……一度も……呼ば…な…い…んだ……。」

僕を掴んでいた陽の手が力なくだらりと下がり、陽の琥珀色の瞳からは大粒の涙が溢れている。

「……陽……。」

「朧…。僕はどこで…間違ったのかな……。」
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