きみの笑顔は、季節外れの太陽のようで
俺の気持ち
    *

少し前までは高橋と一緒に見ていた景色を、一人で眺める。
「誕生日、一緒に過ごしてほしい」
「部活に集中したいから、一緒に帰ろ」
「予選が始まるから、試合見に来てほしい」
「一緒に行ってー…本物の星空、一緒に見よう」

俺がお願いをするたびに、時には悩んだりすることもありながらも、最終的には笑顔で頷いてくれた。

いつの日か、高橋が隣にいてくれることが当たり前やと思ってしまっていた。
いつの日か、高橋にとって一番仲の良い男子は俺で、これからもずっとそうやとさえ思ってしまっていた。

けれど、あの日、俺のせいで。俺が傷つけてしまったせいで。

話すどころか、もう文字でのやりとりすら出来なくなってしまった。


「なんであんなこと言ったんやろ……」

決して本心ではなかった。それは断言できる。

クラスメイトにからかわれるのは恥ずかしくて、気が付けば高橋を傷つけるようなことを言ってしまった。

本当は思っていない。“ただの友達”とも、“付き合うわけない”とも。

あの時、どう答えるのが正解やったんかな。

あれからずっと考えているのに、未だにあの時の正解がわからへん。

ただわかっているのは、この状況を招いてしまったのはすべて自分のせいだということだけやった。


高橋、もう家に帰ったかな。ちゃんと家に着いたかな。泣いたりしていないかな。一人で悩んだりしていないかな。


今日、終礼が終わると、宇山が高橋の荷物を持って出ていくのが見えた。

あいつら、付き合うんかな。そもそも、もう付き合ったんかな。

高橋、元々は宇山のこと好きやったもんな。

今思えば、宇山への想いを断ち切ることが出来たのか、それともまだ想っているのかさえ、知らへん。

「ほんまに、俺、何してたんやろ。あれだけ隣におったのに……」

ここ数か月、宇山に負けず劣らず、いや、きっと宇山以上に一緒に過ごしてきた。
それやのに。

“話しかけるのは用事があるときだけにしてください”

本当に迷惑そうに頭を下げる高橋の顔を思い出すと、電車の中やのに不意に涙が滲み出る。


「ほんまに俺、アホやな……」

呟いた時、ポケットに入れたスマートフォンが少しだけ震える。

誰やろ。高橋じゃないよな。何度送っても返事来んかったし。

どうせバスケ部のグループメッセージやろうな。

ほとんど期待もせずスマートフォンの電源ボタンを押すと、高橋の名前が浮かび上がった。

「高橋やん……」

震える手で、ロックを解除する。

返事してくれたんや。メッセージ読んでくれたんや。

ちょっとは気持ち、伝わったかな。もう一度話せる機会、つくってくれたりするかな。

高まる気持ちを抑えながら、俺はトーク画面を開く。

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