きみの笑顔は、季節外れの太陽のようで
「俺はさっき話した、高橋真凛について話してるよ?」

「……不思議なことに、同じ人について話してたわ」

「だろうね?」

佐々木は、「当たり前だよ」と笑う。

「高橋のこと、嫌いっていう奴、そんなにいないと思うけど。中学校の時も、男女問わず友達は多い方だったと思うし」

「いや、えー、うそ、まじか」

ほんまに同じ人について話してんのかなあ、と呟くと、「そうだって」と佐々木は豪快に笑う。

「それにしても、宮本が女子の話をするなんて珍しいな」

「もしかして高橋のこと気になってるんじゃないの?」と茶化す佐々木の頭を、パシッと叩く。

「んなわけあるか」

どっちかというと、悪い意味で気になってるっつーの。

「まあ、けど、高橋に恋するのはやめておきなよ」

佐々木は俺の返事を聞いていなかったのか、「絶対に報われないから」とわざわざ忠告までしてくれた。

「は? なんで?」

「え、なに、本当に高橋のこと気になってるの?」

「だから、違うって言ってるやん。ただ、なんで“絶対に”報われないのか、気になっただけ」

絶対に、の部分を強調する。

「ああ、それは、だって、あ、ほら」

佐々木が左前を指差す。

そこには、コンビニの前で、笑い合いながらアイスクリームを食べている男女のカップルがいる。

その男女は、紛れもなく。

そういえば今日、俺につっかかってきた後も、あいつら一緒にいたっけ。

「……あの二人、付き合ってんの?」

「いや? 付き合ってはないないみたい。幼馴染なんだって」

へぇ、幼馴染。
幼馴染って、あんなに仲良いもんやっけ。

それ以上の関係に見えるなあ、と思っていると、

「普通に考えて無理じゃん。あの二人の間に入り込むのは」と佐々木が苦笑する。

「宇山もモテてはいたけど、誰かと付き合っていたとかは聞いたことないし。どちらかのことを好きになっても、みんな告白する前に諦めちゃうんじゃないかなあ」

「……なるほどなあ」

だからか。
だから、“絶対に”報われないのか。

確かにあれだけ仲良さそうやったら、余程好きじゃないと告白しようと思えへんよな。

まあ、どうでもいいけど。俺には関係ないし。


ただ、自分には一切見せへん、あの溢れるような笑みから、何故かしばらくの間、目を逸らすことが出来なかった。


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