きみの笑顔は、季節外れの太陽のようで
階段を登り終え、廊下を歩く足音に変わった時、会話が止まった。

その後、足音はパタパタというものにかわり、足早にこの場を去って行ったのがわかった。

「……宮本くん」

体重を預けてしまっていた彼から離れようとすると、手に力を込める。

すると宮本くんは、数秒後、そっと腕を緩めと、「大丈夫。多分、泣いてるの見られてないから」とそっと言った。

「え? あ、うん」

あ、もしかして。
そういうことなのかな。

「ありがとう」

本当は、私が泣いている姿を、隠してくれたのかな。

「別に」

ほら、泣いているのがバレたら俺も面倒やから、と付け足す彼に、思わずクスッと笑う。

なんだ。

宮本くんって、本当は優しいところ、あったりするんだな。

「……やめれば?」

「ん?」

彼を見上げると、彼は少し辛そうに、けれどはっきりと言った。

「もう、宇山のこと追いかけるの、やめれば」

「……」

そうするしかない。だって、もう悠斗は。

頭の中ではわかっているけれど、ここでうなずけるほど、まだ私の気持ちは整理ができていなかった。


「やめて……俺と付き合ってみる?」


「えっ……?」

思いがけない提案に、一気に涙が引っ込む。

“俺と付き合ってみる?”って……宮本くんと付き合うってこと……?

慌てて宮本くんを見上げると、バチッと音を立てそうなぐらい、彼の真っ直ぐな視線とぶつかった。

数秒間黙って見つめ合った後、宮本くんは慌てて否定した。

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