きみの笑顔は、季節外れの太陽のようで
「高橋の家って、どっち?」

「えっとね」

最寄り駅の名前を告げると、彼は「ああ」と答えた。

「知ってるの?」

「うん、近くに大きい市民体育館あるやろ? 中学の時、試合しに行ったことあるわ」

「そっか。宮本くんは? 最寄り駅どこ?」

彼は私が知らない駅の名前を口にした。

「知らないなあ」

「まあ、住宅街で、家以外何もないところやからな」

「私の家の最寄り駅から遠い?」

「うーん、20分ぐらい? 多分やけど」

「じゃあちょっと遠いね」

「まあでも、途中まで一緒やから。ほら、途中で大きい駅あるやろ。俺はあそこで乗り換え」

「ああ、そうなんだ」

毎朝乗り換えのために多くの人が乗ってくる駅名に、私は頷いた。


他愛も無いやり取りをしながら歩いていると、反対車線沿いにコンビニが見える。

薄暗い中で輝くネオンに

「ねえ! コンビニ!」

と指をさすと、

「はいはい、わかってるって。あそこの横断歩道渡ろうか」と宮本くんが左前を指差す。

「うん!!」

「張り切りすぎやろ。そんなにアイス好きなん?」

勢いよく頷いたからか、彼は呆れたように笑った。

「だって美味しいじゃん」

「まあ、そうやけど」

アイス一つで放課後まで待つとはな、と宮本くんが苦笑する。

「それもあるけど」

大通りだから、なかなか信号が変わらない。
私は止まることなく進む車を順番に目で追いながら、続けた。

「自分がしんどい時に声をかけてもらえるって、嬉しいじゃん」

「……まあ、それは俺が優しいからやな」

ワンテンポ遅れて答えた彼に「そうですね」と棒読みで答えると「絶対思ってないやん」と返された。

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