先生との恋・番外編集・
お母さんらしき人が泣き崩れて嗚咽が聞こえるその輪の中に、看護師さんと一緒に高橋がいたのも知ってる。
だから、今日、会いにきたのだろう。
ほんと。
馬鹿じゃないのってくらい、医者の鑑だ。
「想像した?あれが、あたしだったらって」
静かな空間で少し、声のトーンを落として、聞いてみる。
高橋には、どう映った?
どう思ったのだろう。
気になって。
「…」
返事が返ってこなくて、落としていた視線から高橋の方へ移すと、なんとも言えない表情で。
なんで、そんな、悲しそうな顔をするの。
人の死なんて、あんた慣れてるでしょ?
「まだ死んでないけど」
「死なせませんよ」
想像した、なんて言い辛いだろうけど。
「あたしは、思ったよ。次はあたしかも、って」
高橋が少し顔を歪める。
「まぁ、今日だけじゃない。いつもだけど」
この病気になってから、ずっと考えてはいる。
たまたま見てしまった今日の光景も、いつかのあたしなんだろうなって思った。