先生との恋・番外編集・
いつものことながら、僕を見た瞬間の岡本さんの表情は険しい。
だけど、今回はその表情が僕が様子を見に来たこと……も少しはあると思うけれど、それよりも。
「…うるさい」
大体様子を聞こうとする前に
彼女が伝えてくるのは隣に対する苦情だ。
「いつもなら来たらうわ、来たわ…って思うのに最近はやっと来たわって思う自分が嫌だわ」
本当に心底嫌なのだろう。表情で不快感を前回に表される。
「やっと来た?」
「隣の愚痴。看護師さんにはあんまり言いたくないから」
…僕にはいいんだ。
心の中で思う。
だけど言った所で、ケロッと〝当たり前でしょ?高橋だし〟って返ってくることが予想されそうなので
敢えて口に出しては聞かないけど。
我慢強い彼女が
言うくらいだ。
よっぽどうるさいのだろう。彼女もまだ全然本調子ではない。
少しだけ良くなって
少しだけ元気が出てきただけだ。
隣の文句が言えるくらいに。
「…なんで元気なのにここにこようとするの?」
「……人には人のいろんな事情があるんだよ」
「理解できないね」
自分の命が危ういのに、ギリギリまでここへ来ようとしない彼女からすれば。