先生との恋・番外編集・
「ーーー……隣、いなくなったよ」
岡本さんのベッドスペースへ行き、僕の姿を見た瞬間。
リクライニングを少し起こして起きていた彼女が、点滴のついた手で隣を指差した。
確かに。ここからでは隣は直接見えないけれど、いつも聞こえていたあの叫び声は聞こえない。
「そうなんですね」
「…家族が迎えに来てた」
「あ、退院」
隣のベットはここからは見えない。だけど、隣のベッドに通ずる壁をぼんやり見つめながら彼女は呟いた。家族の連絡がついたのだろう。
結局、岡本さんの状態がよくなって部屋が変わる前に、隣が帰ってしまった。
横顔を見つめながら、どんな思いで隣が迎えに来て帰っていく様子を聞いていたのだろう、と思う。