お見合いマリアージュ~敏腕弁護士との仮初めの夫婦生活、彼の愛は予想外でした~
畑の端っこにポツンと久保家の家が建っていた。

「何か、凄い…」
遠めに見える山の稜線が青空の下、はっきりと見え、パワーウィンドを開けると畑から香る土の匂いが鼻腔に入り込んで来た。

「田舎だろ?」

「はい」
瓜生さんの言葉にすぐさま頷く。

車で敷地内まで入っていった。

周りの自然と調和した古びた家。
此処が瓜生さんと葵さんの生家。
私は車から降りた途端、興味津々に辺りを見渡した。
「瓜生さん、鶏小屋がありますよ。それにあそこには蔵が」

「与奈、いちいち俺に報告するな。見れば、分かる」

「写真撮ってもいいですか?」

「写真撮ってどうするんだよ」
私達が家の前で言い合ってると初老の女性が近寄って来た。

「瓜生、来たのね」

「母さん、只今」

「こちらの方が…瓜生の…」

「妻の与奈だ」

「初めまして、妻の与奈です」

「可愛いらしいお嬢さんね、瓜生」

「あ、猫被ってるだけだ。母さん。コイツ、普段は口うるさくて」

「瓜生さん、折角大人しくしてるのに、酷いですよ」

「まぁ、入って入って。お父さんも待っていたのよ」



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