お見合いマリアージュ~敏腕弁護士との仮初めの夫婦生活、彼の愛は予想外でした~
事実婚
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客間に敷かれた二組の布団は仲良く並んでいた。

「まぁー仕方ないな」

「そうね」

私は葵さんが置いていったパジャマを借りた。

「朝一で帰れば、仕事にも支障ないだろう」

「お義母さんの手料理どれも美味しかったですよ」

「母さんは料理上手だからな」

彼の方が先に布団を捲って中に入った。普段は寝る間を惜しみ仕事に励んでいる瓜生さん。
久しぶりの実家の帰省に気が抜けたのか大欠伸しながら、横になる。

「瓜生さん?」

彼は寝床に入ってほんの数秒で、睡魔に負けて眠ってしまった。

私も隣の布団に潜り、彼の寝顔を見つめる。

切れ長の目を飾る睫毛はとても長く、キレイに上向いていた。こうやって、彼の寝顔を見られるのは奥様だけの特権かもしれない。


でも、私達は世間に認められた夫婦じゃない。
婚姻届も出せず、事実婚になってしまった。

結婚式を挙げられなくなった。
すべてが暗礁に乗り上げていた。
犯罪だと気づいたからだ。

あれは一週間前の話。
瓜生さんが婚姻届を持って帰宅した。
婚姻届にはすでに瓜生さんの名前と証人欄には宇佐美社長夫妻の名前と捺印が押されていた。
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