お見合いマリアージュ~敏腕弁護士との仮初めの夫婦生活、彼の愛は予想外でした~
(回想)

「これって、刑法に触れませんか?」

私は婚姻届に名前を書き込みながら、ふと思った。

「本当は結婚する意思がないのに、あたかも結婚する意思があるように婚姻届を役所に提出するんですよ。婚姻する意思もなく、戸籍を変更するのは『公正証書原本不実記録罪』に当たる可能性があります」

「確かにな」
瓜生さんも私の説明に納得した。

「偽装婚で問題なのは、日本人と結婚した外国人の配偶者で警察沙汰になるケースが多いのが理由だ。当該の外国人が在留証明を手に入れる目的で家庭を営む意思もなく結婚すると言う点が入管法違反に触れる。日本人同士の偽装婚に関して、問題なったケースはまだない」


「もしかしたら、私達がその第一号になる可能性はないですか?」

「他者にバレなきゃいい」

「瓜生さん貴方、弁護士でしょ?」
彼の上着の襟に光る弁護士バッチを指差す。

「ほら、婚姻届の証人欄にサインしてくれた宇佐美社長夫妻にも迷惑が掛かりますよ」

私は安易に考えている瓜生さんに訴えた。


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