お見合いマリアージュ~敏腕弁護士との仮初めの夫婦生活、彼の愛は予想外でした~
瓜生さんは私に促され、『似合っているぞ、与奈』とボソッと呟いた。その顔は真っ赤になっていた。

そんな初心な反応をされ、私まで顔が赤くなった。
以前の私達に無かった甘いムードがとても歯がゆい。
夫となった瓜生さんは男性として意識している証かもしれない。
「お二人共顔が紅いですね。初々しさ満点ですよ」

「こんなドレスを着た妻は初めてで…与、与奈…ドレスはそれでいいな」

「あ、うん」

「じゃ今度は俺の衣装を選んでくれ」

「あ、はい」

*********
私はドレスを脱ぎ、瓜生さんのタキシードを選ぶ。

光沢のかかったシルバーグレーの細身タイプのタキシードを選んだ。

試着室から出て来た瓜生さんのタキシード姿に心臓が鼓動が跳ね上がった。

「とてもお似合いですよ。御主人」

「どうだ?与奈」

「あ、馬子にも衣装です」

「何だ?仕返しか?」

「似合ってますよ。瓜生さん」

「ふん、俺は何を着ても似合うからな」

瓜生さんは不遜の笑みを湛え、鏡の前でポーズを決め込んだ。

「その言い方、瓜生さんらしいです」

私の知る瓜生さんは傲慢で意地悪の人。久しぶりに見た私の知っている瓜生さんに心から安堵する。

同居を始めてからの瓜生さんは私の知る彼ではないような雰囲気があった。

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