毒舌な君の,ひどく甘い素顔
え……

じっと,私を見つめる綺麗な顔。

何より今田くんの顔。

堪えられなくなって私は言う。



「緊張……するから」

「……は?」



正直に話した私に対して,今田くんは間抜けな声を出す。



「あっえと,その,人気者の今田くん相手だと緊張するって言うか,そう,緊張するの」

「…へぇ,緊張するの。でも,理由,ほんとにそれだけ?」

「そうだよっ!」

「まぁ,今は見逃してあげる。でも,呼び方変えて。今田くんじゃなくて椛」

「椛……くん?」

「それ,康平達と変わんないじゃん。腹立つ。椛」

「もみ,じ」



幼子みたいに復唱して,口のなかで転がす。

ぶわっと顔に熱が回った。

だから,なんで……!

やっぱり口には出来ない。



「ん。それで良し。じゃあ僕戻るから」



赤くなる私に,心のそこから嬉しそうに笑った椛くんは(心のなかでくらいゆるして)教室に戻っていく。

私の好きな人はどこまでもマイペースだ。
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