溺愛もふもふ甘恋同居〜記憶喪失な彼のナイショゴト〜
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『し、失礼しまぁ~す』

 我が家のリビングなのに、不破(ふわ)がいると思うとどうあったって緊張のあまり遠慮がちになってしまう。

 日和美(ひなみ)は小さな声で、まるでよそのお宅を訪問した〝【気のいい】泥棒〟のような声をかけると、そろりそろりと足音を忍ばせて不破が眠る布団に近付いた。

 不破はテレビ前に置かれていたソファやローテーブルを窓際に寄せるようにして布団を敷いていたから、(ふすま)を開けたら結構すぐそこ――目の前にいて。

 まだ暗闇に慣れ切らない日和美の目に、テレビ下のDVDデッキの時計が光るデジタル表示や、テレビの主電源のスタンバイの明かり、カーテンの隙間から差し込む月光が力を貸してくれる。

 自分も少し前まで暗がりにいたこともあって、割とすぐに夜目に慣れてきた日和美だ。

 真っ暗闇じゃなく、あちこちにほんのりと明かりを放つものがあったのも幸いして。すぐさま布団に入った不破の様子が割とハッキリ認識出来るようになった。


(はわわわ~。不破(ふわ)譜和(ふわ)さん、めちゃ綺麗(きれぇー)

 ぱっちりキラキラなお星さまが散りばめられたみたいな目が開いているところも確かに素敵だけれど、こうして目を閉じていると、まつ毛が長いのが際立つではないか。

 明度なんてほとんどない明かりの下でさえ、(ほほ)にまつ毛から落ちる影が見える気がして――。

 彼の枕元にあるDVDデッキの時計表示の緑がかった明かりに照らされているからだろうか。
 ほんのりと青白く見える不破の肌はまるでビスクドールみたいに現実味がなくて。

 作り物みたいにすべすべの肌に、日和美は思わず明かりに引き寄せられる蛾みたいにおびき寄せられてしまう。

 布団わきにトスン……とひざをつくと、彼へ覆いかぶさるみたいにしてまじまじとその顔を見詰めた。
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